セクション4: 2026年の5つの投資テーマ
- AIブームからAIディスラプションへ:その違いを見極めることが機会への鍵
AI関連の設備投資の急増は金融市場を大きくけん引する要因となっていますが、資本の投入それ自体は目的を達成するための手段に過ぎず、成功を保証するものではないという点を忘れてはなりません(図表2参照)。AIブームは、より広範な動きへと進化しつつあります。その中で、力強い追い風を受ける投資がある一方で、大きな逆風に直面する投資も存在します。後者の例としては、ソフトウェア関連およびITサービス・セクターと結びついた一部の株式・債券投資が挙げられます。これらのセクターでは、バリュエーションが割高な水準に達しており、デフォルト率も高まっています。また、AIの収益化に向けた明確な道筋を示せない企業にとっては、リスクがさらに高まっています。AI関連の設備投資の増加は、それが実際の収益の増加につながらない限り、利益率および投下資本利益率を圧迫することになります。
一方で、恩恵を受ける可能性のある有望な投資先も多く存在します。独自のデータ優位性を持つ企業や、顧客に対してカスタマイズされたソリューションを提供できる企業は、AIディスラプション(創造的破壊)をうまく乗り越えられるポジションにあると考えています。また、インフラ投資においても投資機会を見出しています。具体的には、公益事業、蓄電池、電力送配電といった分野のほか、インフラ整備に関連する資産担保証券(ABS)、不動産、米国地方債なども注目されます。
ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)への直接投資については、「持続可能なエネルギーへの依存度が高く、水資源ストレスの問題を回避し、かつ地域社会との対話に積極的に取り組んでいる施設」を重視することが重要だと考えています。これらはいずれも、長期的な事業継続性と収益性に深く関わる要素です。
- 分散投資を目的に、米国への投資に背を向けるべきではない
AIの成長において米国が圧倒的な存在感を示していることから、意図せず米国資産への配分比率が高まっていると感じている投資家も少なくありません。長期的な資産配分の目標に沿ったポートフォリオの定期的なリバランスはもちろん推奨しますが、その一方で、一部の投資家が魅力的な米国中心の投資機会から必要以上に距離を置こうとしている可能性もあると感じます。
米国への投資は、高い生産性、堅調な企業収益の成長、投資家にとって有利な税制・規制環境、そして相対的に力強い経済成長を背景に、依然として強い投資機会を提供しています。米国の大型株のバリュエーションは高水準にありますが、適切に配分されたAI関連の設備投資に対しては、投資家は引き続きポジティブな評価を与えるものと考えています。株式以外にも、優先証券、シニアローン、不動産、ミドルマーケット企業向けダイレクト・レンディング、商業用不動産向けクリーンエネルギー融資(C-PACE)、インフラ・デットなど、多くの領域が魅力的な投資対象として浮かび上がってきます。
- オルタナティブ・クレジットおよびプライベート市場は引き続き中核的な投資対象、しかし、選別力と案件構造への深い理解がこれまで以上に重要
昨今の報道では、プライベート・クレジットがバブル状態にあるのではないか、あるいは不適切に組成された取引が金融システム全体への波及リスクを引き起こすのではないかという懸念が増しています。確かにプライベート・クレジットにはリスクの高いセグメントが存在し、過度なレバレッジや脆弱なキャッシュフローの発行体への貸付も一部あることは私たちも認識しています。しかし、これらはむしろ案件構造への深い理解、運用マネージャーの適切な選定、コベナンツ(財務制限条項)の整備、そして慎重な投資選別がいかに重要であるかを改めて示すものです。今後は、運用マネージャー間のパフォーマンス格差が、投資およびファンド・レイジングにおける成否を大きく左右するとみています。
米国および欧州のコア・ミドルマーケット企業向けダイレクト・レンディングには、引き続き十分な投資機会があると考えています。ソフトウェア・セクターは依然として混乱の渦中にありますが、ミドルマーケット全体に及ぶシステミック・リスクの兆候はみられません。またAI関連投資への集中を分散させるため、流通・廃棄物処理・雨水管理・商業施設向け造園・害虫駆除といった「オールド・エコノミー」型の事業に着目することも有効とみています。プライベート・クレジットの投資適格セグメントにおいては、エネルギー需要の高まりを背景に、電力公益事業者、新規発電所、送電インフラの拡充といった分野で投資機会が生まれています。さらにシニアローン、CLO(ローン担保証券)、不動産・インフラ向けデット、C-PACE融資といった他のオルタナティブ・クレジット・セグメントにも魅力的な機会があると考えています。
プライベート・エクイティについても、ソフトウェア・セクターでは同様の懸念が当てはまりますが、他のセクターには投資機会が存在します。投資家は、成長見通しの裏付けなく高いバリュエーションを追求しているようにみえるファンド・マネージャーに対しては慎重な姿勢を持つべきです。ここでも、投資先の選別と厳格な精査が不可欠です。プライベート・エクイティの中では、単一資産クラスに焦点を当てたPEセカンダリー市場に最も魅力的な機会があると見ています。
- 米国地方債は、引き続き魅力的かつ持続的な投資機会を提供
2026年の半ばを過ぎた6月末時点でも、米国地方債は引き続き順調に推移しています。同市場は今年に入り、債券市場全体をアウトパフォームしており、クレジット・スプレッドも縮小していますが、さらなる上昇余地があることを示唆しています。私たちの見解では、需要は引き続き堅調で、利回りは相対的に高水準にあり、ファンダメンタルズも良好です。州・地方自治体の財政状況も健全な状態を維持しています。また、米国地方債のイールドカーブは米国債よりも傾斜が急であることから、ある程度の金利リスク(デュレーション・リスク)を取ることが合理的な選択肢となる数少ない投資対象の一つといえます。米国地方債においては投資適格級、ハイ・イールド級の双方において、魅力的な投資機会があると考えています。
- プライベート不動産市場の回復は、まだ始まったばかり
2025年は、不動産供給の縮小と価値上昇というトレンドが始まった年となりました。こうした傾向はより確固たるものとなっており、拡大する投資機会を市場参加者が認識するにつれ、需要と取引活動も加速しています。当レポートの11ページの「有望な投資アイデア - 不動産」で説明しているとおり、現在は主に供給制約の恩恵を受けるセクター(医療系オフィスや高齢者向け住宅など)、および食料品スーパーを核とするリテール(商業施設)のようなディフェンシブな分野に注目しています。また、需要が拡大しているリテール市場や住宅市場においても、厳選した投資機会があるとみています。
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