要旨
- AIブーム、具体的には、ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)によるデータセンターの急増が、世界の金融市場を動かす主要な原動力となっているようです。これはある意味で集中をもたらしており、分散投資の面でいくつかの課題が生じる可能性があります。
- ただし、AIに関連する投資の中にも細かな違いや差異があると考えます。株式、プライベート市場、オルタナティブ・クレジット、リアル・アセット といった各分野において、他と比べて有利なポジションにある投資対象が存在しています。
- より広い観点では、米国地方債や不動産に投資妙味を見出しています。いずれも追い風となる要因が引き続き強まっています。
セクションごとの投資見通し
- 集中のパラドックス
- セクション2: 経済・市場環境 -押さえておくべき重要なポイント
- セクション3: 資産クラス別の「ヒートマップ」
- セクション4: 2026年における5つの投資テーマ
- セクション5: 有望な投資アイデア
集中のパラドックス:成長ドライバーが偏る程、より広い視野が求められる理由
サイラ・マリク , 最高投資責任者
集中することは、無視することである。
見知らぬ場所を車で運転しながら道路標識や目印を探そうとするとき、思わず車内のステレオの音量を下げてしまうということを経験したことはありませんか。
心当たりがあるのはあなただけではありません。騒音やその他の感覚的な刺激は集中力を妨げるものであり、脳科学の観点からも、よりよく見るために静かに集中するというのは、実に「目に見える成果をもたらす」戦略であることが確認されています。現在の投資環境もまた、「騒がしい」状況にあります。地政学的な混乱、経済データの短期的な移り変わり、そして予測市場から絶え間なく流れてくる情報がまとまって喧騒を生み出しています。その結果、多くの投資家は複雑な情報の洪水をくぐり抜けることをあきらめ、人工知能(AI)関連の取引という「一つの音符」に引き寄せられてしまっています。
その結果として生じているのが、様々な意味での「集中」です。米国株式市場の相対的な優位性、収益成長、そしてベンチマーク指数の構成が、ごく少数のAI関連銘柄に集中しつつあります。JPモルガンによれば、年初の時点でマグニフィセント7を含むS&P500指数構成銘柄のわずか28社(全体の6%未満)が、同指数の時価総額の約50%を占めていました。ファクトセットのデータによると、先月に決算発表が終了した第1四半期の決算シーズンでは、情報技術セクターの前年同期比成長率は+54%と、S&P500指数全体の成長率のほぼ2倍に達しました。また、マグニフィセント7の+63%という成長率は、残りの493社の実績を大きく凌駕するものでした。株式市場にとどまらず、AIは債券市場やリアル・アセット(実物資産)市場においても強力な影響力を持ちつつあり、分散投資の意義を一層複雑なものにしています。
AI関連の投資テーマの流れに乗ることは抵抗の少ない道かもしれませんが、運転中に雑念を払って集中するのとは異なり、単一のテーマだけに集中しても、目的地にたどり着けるとは限りません。焦点が狭ければ狭いほど、他の魅力的な投資機会を見逃す可能性が高まります。集中によって「分散が効いたリスク/リターン」の源泉を限定してしまうようなアプローチは、健全な戦略とはいえません。
しかし、これは「AIがもはや魅力的な投資機会を提供していない」ということではありません。ただ、投資家の視点がAI関連への設備投資が最も多い企業から、実際に投資に対して意味のあるリターンを生み出している企業へとシフトするにつれ、この取引はより複雑な様相を呈してきています。こうした点や、AIに関連する様々なサブ・セクターおよび産業における特有の追い風・逆風については、本レポートの8ページの「ポートフォリオ構築における5つの投資テーマ」の中で詳しく取り上げています。
また、当レポートではAIという既に広く知られている投資テーマを超えた、私たちが注目するより幅広い資産クラスの組み合わせについても論じています。これには、選別力と案件構造への深い理解が極めて重要であるオルタナティブ・クレジットやプライベート市場(エクイティ、デット、不動産)が含まれており、AIによる業界変革(AIディスラプション)や地政学的ノイズからある程度の保護的役割を提供します。さらに、スティープ化したイールドカーブと堅調なファンダメンタルズの恩恵を引き続き受けている米国地方債(投資適格、ハイ・イールドの双方)についても、その魅力を説明しています。
更新された「ヒートマップ」および各資産クラスの私たちの投資スペシャリストによる「有望な投資アイデア」 は、ポートフォリオの投資視野を広げるための詳細情報を提供しています。皆様の前に道が開け、そして良い意味で不要な集中力を失うことができますことを願っております。
引き続きこちらをご覧ください。
東京
- +81 3 4563 6250
- 電子メール
- 〒100-7018 東京都千代田区丸の内二丁目7番2号JPタワー18階
出所
すべての市場データおよび経済データは、ブルームバーグ、ファクトセット、モーニングスターの情報に基づいています。