投資見通し
2025年 年央の市場展望: ノイズに惑わされず、チャンスをつかむ
主なポイント
- 投資家たちは今、ボラティリティの高まりに神経を尖らせていますが、依然としてさまざまな市場でバリューと魅力的なファンダメンタルズの機会がみられます。
- 債券クレジットセクター(特に地方債)は魅力的な利回りとリスク・リターン特性を提供しています。
- 当社はさらに、不動産、インフラ、米国大型株のオーバーウェイトを提案します。
セクションごとの投資見通し
- セクション1:ノイズに惑わされず、チャンスをつかむ:5つの投資テーマ
- セクション2:経済と市場:知っておくべき重要ポイント
- セクション3: アセット・クラスの「ヒートマップ」
- セクション4: 2025年の5つのテーマ
- セクション5: Nuveenが考える最善の投資アイデア
セクション1:ノイズに惑わされず、チャンスをつかむ
サイラ・マリク, 最高投資責任者
19世紀のドイツの哲学者ショーペンハウアーは「ノイズ」について、「あらゆる妨害の中で最も迷惑な存在」だと述べました。ノイズを「忌まわしく」「思考を殺してしまう」と表現したことは、彼の厭世的な世界観とよく一致しています。しかし、その悲観的な見方は報われたようで、彼は投機的な投資から最悪の結果を想定し、保守的な国債に投資することで一生経済的に自立した生活を送ることができました。
ショーペンハウアーがノイズに対する苛立ちを述べた当時から、投資環境は大きく変わっていますが、経済と市場は今もかつてないほどノイズにあふれています。今のところ2025年は関税をめぐる激動の波に翻弄され、株式市場は強気相場と弱気相場との間で上下に激しく揺れ動いています。財政・金融政策の見通しは相変わらず視界不良で、戦争や地政学的緊張がさらにその不透明感を増しています。
このような環境で成功するには、ノイズに惑わされることなく、最も魅力的な投資機会を見つけることが不可欠です。市場のざわめきの中で投資機会を見極めるために、当社では以下の5つのテーマを提案します。このうちいくつかは前回の展望と同じものですが、その他は変化し続ける市場動向に基づき、新たな見解を提供するものです。
1. 債券市場のリターンを押し上げるのはリスクフリー金利でなく、相対的なスプレッド差異と銘柄選別。市場では米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ観測が後退しており、利下げの時期は従来予想よりも遅くなるとの見方に傾いています。一方、長期利回りは、関税を巡る不透明感によって不安定にはなっていますが、年末までにはやや低下するでしょう。したがって当社は、相対的なスプレッドの差異に注目してクレジットセクターで銘柄選別を慎重に行うことを推奨する一方で、国債に対して従来ほど消極的ではなくなっています。
2. デュレーション重視の投資家には、依然として地方債を推奨。 州政府や地方自治体の財務状況が堅調な一方で、(新発債の増加もあって)利回りが高止まりし、年初来リターンが出遅れている地方債は非常に優れたバリューを提供しています。米国地方債のイールドカーブは米国債よりもスティープ化しており、デュレーションの長期化を厭わない投資家にとっては魅力的な機会となるでしょう。
3. 不動産市場のトレンドは良好。約2年間にわたって悪化が続いてきた不動産市場も反発し始めました。不動産価格は底入れしたと思われ、建設着工件数の減少にともなってコロナ禍後の過剰供給も収まりつつあります。全体的に需要見通しは今も不透明感が残りますが、メディカルオフィスや食料品を中核とする小売施設、およびアフォーダブル・ハウジングなどに需要が戻ってきています。
4. 世界は分断化したとしても市場はなお相互依存的。グローバリゼーションはもう遠い記憶なのでしょうか?極端な貿易政策や地政学的な混乱を見る限り、世界は分断化していると思えるかもしれませんが、経済成長と金融政策の足並みは今も全体的に揃っています。急速に広まりつつある「米株は売り」という見解は誤った考え方に導かれたものである可能性があります。むしろ当社は、底堅い増益モメンタムと堅固な市場のファンダメンタルズに基づき、米国大型株に対する投資判断を引き上げました。
5. 電力需要は発電能力を上回る勢いで伸びており、政治的な変化の中で機会が出現。データセンターや人工知能(AI)の拡大を支えるための電力と発電の需要が急増していることは、そのために何十億ドルも投資している大型のテクノロジー企業だけでなく、電力関連のインフラ資産にとっても好材料です。
最終的に、市場のノイズを切り離して確かな投資戦略を見極めることができるかどうかは、私たちの手にかかっているのです。困難の裏には必ず機会があります。こうした機会をじっくりと見極めようとする投資家は、悲観的な感情に流される投資家よりも優れた結果を出すことができるでしょう。ショーペンハウアーとほぼ同時代を生きた作家のオスカー・ワイルドは、「悲観論者とは、好機がドアをノックしているときにそれを騒音だと文句を言う人のことだ」と辛辣な言葉を残しています。
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