主なポイント
- インフレ率と金利が高止まりする中、経済成長減速の兆候も相まって、経済は今、乱気流の予想される高度の高い着陸ゾーンに入りつつあります。
- そうした環境では、私たちが2025年に向けた5つのテーマで示したポートフォリオ構築への新たなアプローチが必要です。
- 私たちは選別的にクレジットに焦点を当てることを提案します。特に、地方債、不動産、インフラ、および米国小型株に投資機会がみられます。また、アセット・クラス全体における私たちのベスト・アイデアも紹介します。
セクションごとの投資見通し
- セクション1:着陸態勢をとり、ニューノーマルへ
- セクション2:経済と市場:知っておくべき重要ポイント
- セクション3: アセット・クラスの「ヒートマップ」
- セクション4: 2025年の5つのテーマ
- セクション5: アセット・クラス展望
セクション1:着陸態勢をとり、ニューノーマルへ:
新たな経済環境への移行に向けた5つのテーマ
サイラ・マリク , 最高投資責任者
私たちは、今年の展望として「着陸態勢をとり、ニューノーマルへ:新たな経済環境への移行に向けた5つのテーマ」というコンセプトを打ち出しました。米国経済は、インフレ率や政策金利の動向は落ち着いても、コロナ禍前の水準に比べると構造的に高止まりが続く状況にあり、従来の「ハードランディング」と「ソフトランディング」という定義にはあてはまらない態勢に入っている、というのが年初の見解でした。
最終着陸態勢に入る中で、政策の不確実性や市場のボラティリティの高まりなど予想外の乱気流は生じましたが、今日の動向を見ると、年初に私たちが示したものと同じ、またはほぼ同じ投資テーマに向かっているようです。
ポートフォリオ構築に向けた5つの主要テーマは以下の通りです。
1. 債券市場のリターンを押し上げるのはリスクフリー金利でなく、相対的なスプレッドの差異と銘柄選別。今年は米国の利下げは緩やかなペースとなり、米国債市場はボックス圏推移が予想され、これは概ねその通りの展開となっており、今後もこうした動きとなる見込みです。向こう1年の債券戦略として、デュレーションよりも相対的なスプレッドとクレジット・セクターの銘柄選別に焦点を当てる戦略がよいと思われます。
2. デュレーション重視の投資家には、依然として米国地方債を推奨。私たちは全体的にデュレーション以外の要因に注目し始めていますが、それでも一部の投資家にとっては、中短期デュレーションの課税債と長期デュレーションの米国地方債でバランスを取るバーベル・アプローチが理にかなっているといえるでしょう。米国地方債のイールドカーブは米国債カーブよりもスティープ化しており、地方自治体のクレジット・ファンダメンタルズは依然として健全です。
3. 不動産市場は既に底入れ。不動産は回復途上にあります。価格の安定とファンダメンタルズの回復に加え、流動性も改善するにつれて、需要は伸びています。不動産パフォーマンスはここ2四半期で上向いており、過去の傾向を見ると、それは長期的な上昇サイクルの兆候といえます。特に、物流セクターやオルタナティブ・セグメントに投資機会がみられます。上場REITも選好します。
4. 電力需要は発電能力を上回る勢いで伸びており、政治情勢が変化する中、新規インフラ投資の機会が出現。人工知能(AI)の台頭と、それに伴う発電・送電設備への投資増によって新たなエネルギーブームが生まれています。純粋なAI投資よりも、電力関連のインフラ投資の方が、パブリック資産にしてもプライベート資産にしても、多くの利益をもたらす可能性があります。米国では、トランプ政権が従来の化石燃料やパイプラインへの投資にテコ入れする可能性が高いでしょう。とはいえ、グリーンエネルギーへの移行は特に欧州を中心として世界的に持続すると予想します
5. 小型株も大型株に負けないパフォーマンスを示す可能性。米国小型株はアンダーパフォームが続いており、前回、米国小型株を格上げしたのは時期尚早だったようです。しかし、私たちは依然として、魅力的な相対バリュエーション、業績予想の上方修正、過去の業績パターン、米国政権の優先事項の変化(法人税率引き下げ、規制緩和、より保護主義的な貿易政策)などがこのアセット・クラスに追い風をもたらすとみて、楽観的です。
全体として向こう1年は、経済と市場の推進力となる大きな流れがある一方で、スムーズな着陸を困難にする横風が拮抗する力となり、投資家の間で緊張感が生じるでしょう。重要なのは、飛ぶことを恐れて目的地にたどり着けないということにならないよう、リスクに備えつつも機会に十分な注意を払うことです。
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