セクション2:経済と市場
知っておくべき重要なポイント
米国は着実に減速
2025年初め、米国の経済成長率は、好調だった2024年の3.2%から既に2.5%に減速していました。米国経済は、今後数四半期で徐々に減速して2.0%近傍の巡航速度の安定成長になると予想されます(第1四半期はマイナス成長になる可能性も)。最近のデータはその見解を裏付けています。失業率が4.0%超でとどまっているにもかかわらず、雇用は相変わらず堅調な伸びを示し、個人消費は減速しているものの、前年比で約3%とやはり堅調です。住宅市場は今回のサイクル初期には横ばい推移が続いていましたが、ここ数カ月で活発化しています。全体として、経済指標はここ数年に比べてペースは鈍っていますが、拡大が続いていることを示すものとなっています。
世界の他の国・地域との格差が縮小
2024年が米国経済のアウトパフォーマンスの年であったならば、2025年はその格差が狭まる年となりそうです(図表1)。欧州では、最近になってドイツの財政均衡ルール(いわゆる「債務ブレーキ」)の改革が進み、財政政策が経済を下支えしています。欧州中央銀行(ECB)は金利政策を緩和しており、2回の利下げを行った後、少なくとももう1回の利下げを行う可能性が高まっています。こうした財政緩和と金融緩和の組み合わせは、実質所得の改善に後押しされた消費回復の兆しとともに、経済全体の成長を支えるでしょう。中国は、2025年の成長率目標を前年並みの5%前後としています。財政政策もより支援的になるとみられるため、そうした目標は達成可能と私たちはみています。一方、低迷が続いていた不動産セクターも、数年間の縮小を経て、底打ちの兆しを見せています。
高まる政策見通しの不透明感
米国の政治的・政策的変化は、移民、反トラスト、金融規制、税金、支出、関税など、あらゆる分野に及び、経済的影響もさまざまです。関税対象と関税率は常に変動し、インフレリスクを生み出しているのは明らかです。移民政策の変化によって移民の純増数はコロナ禍以前の年間約100万人に減るでしょう。米国の税制改革法はおそらく延長されると思われ、州・地方税(SALT)控除の見直し、国内製造業への補助金、チップや残業代に対する個人所得税の減税なども含め、細かな減税措置が追加される可能性もあります。これらの措置が組み合わさって、実質成長への影響は概ね相殺されるかもしれませんが、私たちは新たな関税はコアインフレ率を0.3%程度押し上げると予想、また予想以上に極端な関税が導入された場合は1.0%になる恐れもあるとみています。
米国の経済成長がやや減速する中で、インフレ率と金利は根強く粘着性を維持するとみられます。
国債利回りはボックス圏推移が継続
私たちは、今年の10年国債の利回りは4.25%から4.75%のレンジで推移すると予想しています。この見解は、2025年に米連邦準備制度理事会(FRB)が金利を2回引き下げ、政策金利が3.75%から4.00%に引き下げられることを想定したものです。Nuveenのフレームワークでは、成長鈍化、インフレ緩和、FRBの利下げなど、いくつかの要因が利回りの低下を示すものとなっています。しかし、これらの要因も、現在利回りを押し上げている要因(インフレの不確実性と上振れリスク、財政緩和、ターム・プレミアム)によって相殺されると私たちはみています。今年の市場全体の債券リターンは、リスクフリー金利の大幅な変動よりも、おそらく相対価値、銘柄選別、インカムゲインによって左右されるでしょう。
関連インサイト
オフィス