セクション4: 2025年の5つのテーマ
- パブリック及びプライベート債券市場のリターンを押し上げるのはリスクフリー金利でなく、相対スプレッドと銘柄選別。
私たちは、米国の利下げは緩やかなペースで、米国債市場はほぼボックス圏推移となることを予想しています。それを踏まえると投資家は、デュレーション・ポジションのタイミングよりも、相対的なスプレッドを重視して特に魅力的に見えるクレジット・セクターで銘柄選別を行うことにより、アルファ創出に注目すべきでしょう(図表2)。例えば、2023年11月以降毎月プラスのリターンを記録しているシニア・ローンは最小限の金利リスクで8%以上の利回りを提供しており、信用格付けの格上げペースは格下げペースを上回っています。
これまでのところ、こうした見解はほぼ奏功しています。クレジット・スプレッドが拡大する一方で、金利は低下し、世界の債券市場を支えています。より高い金利がより長く続く環境においては、金利と信用力に対する感応度のバランスが取れた分散型債券ポートフォリオがレジリエンスを示すとの見方に変わりはありません。しかし銘柄選別は重要です。例えば私たちは、米国企業向けクレジット(ハイイールド社債とローン)に対しては強気ですが、比較的質の高い発行体を選好します。証券化分野では、データセンターの資産担保証券や非政府機関の商業不動産ローン担保証券(CMBS)など、リスク調整後のスプレッドが魅力的なオフ・ベンチマーク銘柄を選好します。また、ミドルマーケットにおけるプライベート・クレジット、特にレバレッジが低く、コベナンツが強固な、保守的な構造のものを選好します。 - デュレーション重視の投資家には、依然として米国地方債を推奨。
第1のテーマに関連して、個人投資家は、課税債における中短期のデュレーション・ポジションと長期デュレーションの米国地方債とを組み合わせたバーベル戦略を検討すべきでしょう。地方債のイールドカーブは米国債よりもスティープであり、地方債の信用ファンダメンタルズは依然として堅調であることから、デュレーションが比較的長い米国地方債の投資家は高い金利感応度から十分なリターンを得ることができると思われます。
米国地方債は今年、好調なスタートを切っており、米国債よりも魅力的な状態が続いています。地方自治体は信用力が高く、米国以外の投資家や機関投資家が配分を増やすことで、米国地方債への需要が高まると予想します。運輸セクターは空港ターミナルの拡張と近代化に向けた多額の支出の恩恵を受けており、上下水道事業セクターは健全なキャッシュフローと十分な借入余地があることから、特に魅力的なセクターに思われます。 - 不動産市場は既に底入れした。
不動産市場は(ついに)回復し始め、価格の安定に加えてファンダメンタルズと流動性の双方の改善を受けて投資家需要が上向いています。不動産市場のパフォーマンスはここ2四半期で上向いており、過去の傾向を見ると、それは長期的な好転の兆しといえます。多くの報道では、オフィス不動産セクターの高い空室率が騒がれていますが(また、確かにオフィス・セクターは厳しい状況が続いています)、物流セクターやオルタナティブ・セクターなど、他のセクターでは十分な投資機会があると見ています。また、上場REITも、健全なファンダメンタルズや増益見通しに基づき、魅力的です。
不動産への強気な見方を背景に、弊社は関連するアセット・クラスにも機会があると考えます。不動産市場が上向くにつれ、住宅ローン担保証券や商業不動産ローン担保証券の価値も上昇するでしょう。また、商業用不動産評価クリーン・エネルギー(C-PACE)ローンなどの制度も含め、建物のエネルギー効率を高めるための資金を提供する投資にも、ますますの機会を見出しています。 - 電力需要は発電能力を上回る勢いで伸びており、政治情勢が変化する中、新規インフラ投資の機会が出現。
人工知能(AI)の台頭と、発電・送電施設関連の設備投資増によって新たなエネルギーブームが生まれています。パブリック市場でもプライベート市場でも電力関連のインフラ投資は、(おそらくAI専業銘柄よりも)これらのトレンドから恩恵を受けるでしょう。
米トランプ政権下で規制や政治が変化していることで、今後のエネルギー業界における「勝者と敗者」に関する見方が再評価されています。全体として、グリーンエネルギーへの移行は世界的に(特に欧州で)持続するでしょうが、天然ガス、パイプライン、従来型のエネルギーなどの投資はトランプ政権の政策の恩恵を受けると思われます。電力需要が従来の供給能力を上回って伸びており、原子力発電や地熱発電も増える可能性があります。これとは対照的に、米国の風力発電や電気自動車の充電インフラなどの分野は、厳しさを増す可能性があります。 - 小型株も大型株に負けないパフォーマンスを示す可能性。
これは唯一、私たちの予想が外れたテーマで、小型株はアンダーパフォームが続いています。しかしながら、魅力的な相対バリュエーションと変化する米国の政治的背景の組み合わせが小型株にとって今後追い風になることが期待されます。トランプ大統領と共和党が多数派を占める議会は、法人税率の引き下げ、規制緩和、保護貿易政策を推進することでしょう。これらの傾向は、新たな設備投資サイクルを促し、小型株にとって追い風を生み出す可能性があります。
その他のグローバル株式市場では、私たちは米国以外の先進国市場への強気姿勢を強めています。日本についても、増益や成長促進策などを踏まえ、引き続き強気です。多くの市場観測筋は、私たちも含め、年初に欧州市場に対して悲観的過ぎたようです。魅力的なバリュエーション、ドイツの大規模な財政刺激策、相対的成長率の改善により、非米国株式はNuveenのヒートマップ上、一段階改善しています。
関連インサイト
オフィス