セクション5: アセット・クラス展望
株式
ベスト・アイデア
- 特に選好するのは、フリーキャッシュフローの水準が高く、利益率も堅調な傾向がある配当成長株です。
- また、インフレの高進と経済成長鈍化の双方を乗り越えることができるインフラ株も選好します。
投資ポジショニング
株式市場は依然として、金利とインフレ率の高止まりに経済成長の鈍化が加わり、プラスとマイナスのクロスカレントの間でもみ合う状態が続いています。しかし、バリュエーションは拡大していますが(主に少数の超大型テック株に主導されたもの)、企業利益の堅調さに加え、米国における成長重視の税制および規制政策などを背景に、まだ魅力的なグローバル株式市場は残っています。したがってグローバル株式市場に対しては概ね中立姿勢を継続し、ボラティリティは比較的高い状況が続くと予想します。
全体としては、比較的質の高い市場セグメント内の優良銘柄へのバイアスを維持しつつ、ファンダメンタルズ面での追い風を受けそうな業界や地域を選好します。同様に、経済状況や金利変動に対する感応度の高い分野については、消極姿勢を維持します。米国では最近まで超大型テック株が株式市場を席巻していましたが、今後は株式市場の牽引役は多様化するとみています。特に税政策の変化やM&A活動の活発化、保護貿易の高まりなどから恩恵を受ける米国小型株に対して積極姿勢を維持しています。
米国以外では、ポートフォリオ構築テーマで述べた通り、先進国に対して強気姿勢を強めています。ドル高や関税の動向は依然としてリスクですが、グローバルに投資機会が増えています。
プライベート・エクイティ市場は、特に分配金不足と金利の高止まりを受けて、引き続き圧迫されています。しかし、M&A市場は活発化すると予想され、資金調達と分配の双方にとってプラスとなるでしょう。
債券
アンダース・パーソン
ベスト・アイデア
- 証券化商品とシニア・ローンは双方とも、低いデュレーション・リスクで確かなバリューを提供します。
- 米国地方債の中では、引き続きハイイールド債が魅力的であり、2025年にはハイイールド債と投資適格債とのパフォーマンス格差が縮小すると考えます。
投資ポジショニング
金利の低下ペースは緩やかで、インフレリスクは残っていますが、世界的なマクロ経済環境は債券投資にとって有利な状況であると考えます。金利は今後も高止まりし、2025年を通じてほぼボックス圏での推移となるでしょう。その結果、足元の利回りは魅力的なインカムゲインを提供しています。
私たちは当面、デュレーション・リスクのみを取るのではなく、クレジット・アロケーションを通じてより良いレラティブバリューの投資機会をみつけることができるとの見解を維持しています。全体的にニュートラルなデュレーションを選好しますが、多額のキャッシュを保有している投資家は、デュレーションをやや延長し、運用利回りを上げることを検討すべきでしょう。信用ファンダメンタルズと経済背景を踏まえると、非投資適格銘柄も含め、選別的に信用リスクをとることも提案します。
私たちは、シニア・ローンが市場で最善の投資機会を提供していると考えます。金利動向や比較的高い利回り、デフォルト率低下の可能性を考えると、変動金利投資は魅力的にみえます。また、証券化商品(特に魅力的な利回りと堅実な信用リスクを提供するモーゲージ関連投資)とハイイールド債(スプレッドはタイトでも、利回りとファンダメンタルズは依然として堅調)も選好します。
米国債と投資適格債は警戒的にみています。米国債は、他にもっとバリューのある投資対象があるためで、投資適格債については、スプレッドがタイトな上、デュレーションの特性が私たちの選好する水準より長いためです。新興国債券は最近好調なパフォーマンスを示していますが、ドル高と関税のリスクは残っています。
米国地方債は、クレジット・クオリティが優良で、しかも安定しています。州政府や地方自治体のバランスシートは健全で、流動性も十分にある上、地方債市場の需給動向も投資家にとって有利です。さらに、パフォーマンスが昨年よりも低水準で推移しているため、バリュエーションも魅力的に見えます。米国地方債は、相対的な利回りの優位性と、長めの資産の信用ファンダメンタルズが依然として堅調なことを考えると、長期デュレーションが合理的と思われる分野の1つです。
プライベート・クレジット市場は引き続き好調で、私たちは全体的によりディフェンシブで質の高い分野を選好します。市場の成長は鈍化していますが、依然としてプラス圏にとどまっています。
不動産
ドナルド・ホール
ベスト・アイデア
- 私たちは、ヘルスケア、物流、住宅セクターを中心に、教育水準が高く多様性があり、人口が増加中の「グローバル都市」に引き続き焦点を絞っています。
投資ポジショニング
今後1年のプライベート不動産の見通しを引き上げましたが、このスタンスは理にかなっていると引き続きみています。供給問題は依然として残っており、金利の高止まりが逆風となる可能性はあります。しかし、不動産の賃料と稼働率は着実に伸びており、投資家需要も大半のセクターで回復しています(オフィス・セクターは依然として厳しい状況)。市場環境の改善に伴って不動産案件をめぐる競争が増していることは、将来に向けてよい兆候といえます。
ヘルスケアと地域密着型小売(ネイバーフッド・リテール)は、特に私たちが有望視しているセクターです。外来メディカル・ビルは需要が供給をはるかに上回っているため空室率が非常に低く、高齢者向け住宅は人口動態の変化と新規供給が限定的なことで恩恵を受けています。ネイバーフッド・リテールについては、市場コンセンサスとは異なるかもしれませんが、米国、欧州、アジアの一部においては、低い空室率、限られた新規供給、魅力的な価格設定などが追い風になると私たちはみています。
バリュエーション水準や比較的ワイドなスプレッドを踏まえ、私たちは不動産エクイティよりもデットの方をやや選好します。
リアル・アセット
ジャスティン・オルソ
ベスト・アイデア
- パブリック市場のベスト・アイデアには、北米の高齢者向け住宅(人口動態の変化や業界統合による成長機会)や、AI関連のインフラ、特にまだ潜在的な利益が十分に反映されていない電力会社などが含まれます。
- プライベート市場では、気候変動やデジタル化の進展と整合する投資、例えばクリーン・エネルギーの発電やデータセンターへの投資に引き続き注目しており、また、タンパク質や健康食品に対する世界的な需要の高さも投資機会と見ています。
投資ポジショニング
私たちは引き続き、パブリック・プライベート双方のインフラ投資を選好しています。供給を上回る勢いで伸びている電力需要の大幅な成長が今後数年間の強い追い風となるでしょう。この傾向は、データセンター、発電事業者、送電設備所有者、独立系発電事業者、エネルギー・パイプライン所有者、バッテリー・ストレージ投資などのエクイティ投資にとって有利です。米国のオンショアおよびオフショア風力発電投資については、政治的にも規制面でも厳しい目が向けられていることから私たちはやや消極的ですが、欧州での同分野への投資は引き続き堅調に見えます。エネルギー・インフラ債への投資も同様の要因により魅力的に見え、生成AI、データセンター、エネルギー貯蔵を中心としたデット投資には特に機会があると考えます。
パブリック不動産に関しては、ファンダメンタルズと収益見通しは堅調に見えます。特に、供給がタイトで需要が伸びている高齢者向け住宅に魅力があります。
農地投資は、マクロ経済的要因や地政学的リスクの影響を比較的受けにくい傾向があります。一年生作物の利益率と利益は減少していますが、米国南東部や太平洋岸北西部など、作物の多様化が進んでいる分野への投資は魅力的です。また、需要増の恩恵を受ける柑橘類、アボカド、サクランボ、食用ブドウなど米国以外の多年生作物投資にも価値があると見ています。
成長市場のファーストフード・レストラン・セクターで店内労働削減を可能にする食品原材料加工に焦点を絞った投資など、アグリビジネス投資にも機会があります。
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