2023年1月31日
地方債
課税地方債:2022年の逆風は 2023年の追い風になる可能性
重要なポイント
- 米国債利回りは引き続き変動が大きく、クレジット・スプレッドの拡大がみられたにもかかわらず、地方債は2022年第4 四半期に、プラスのリターンを創出しました。
- 課税地方債の新規発行は第4四半期および2022年を通じて著しく落ち込みましたが、現在の利回り水準は、債務者になるよりも債券投資家になるのに良い時期であることを示しています。
- 地方自治体では潤沢なキャッシュを有し、歳入も史上最高水準を記録しており、格付けも高いことから、経済成長が今後減速したとしても十分に対応できると考えます。
課税地方債市場のパフォーマンスは、10月にクレジット・スプレッドが年初来のピークを記録し、4四半期の間は不安定な動きが続きました。それにもかかわらず、新規発行が限定的であったことや米国債利回りの動きがレンジ内にとどまったこと でパフォーマンスの改善がみられました。 地方債は第4四半期をプラスで終えることができております。今後、インフレは低下を続けるはずであり、米連邦準備制度理事会(FRB)もこの傾向を確認することになるでしょう。この場合、マクロ経済からの追い風が課税地方債に対する強固な需要を支え、2023年の盛り返しに貢献するでしょう。
見通し
第4四半期をプラス・リターンで終えたことで、2023年に向けてモメンタムを創出
マクロ経済は2022年後半にかけては安定感を増してきました。例えば、12か月に亘るインフレは非常に高い水準にとどまっていますが、直近5か月 間の推移はFRBの思惑に沿うものです。FRBはインフレ対応に断固とした姿勢をとっておりますが、タカ派的なトーンは僅かにシフトし、利上げペースの減速がみられました。
サプライ・チェーンに関する問題も大きく改善をみせました。労働市場は堅調に推移していますが、人々が仕事に戻ることは最終的には経済にプラスとなります。平均時給の伸びは労働市場参加率の上昇とともに減速してきております。
しかしながら、第4四半期における米国債利回りの上昇は限定的で、2022年3四半期までとは対照的な動きとなりました。
金利環境が安定化したことで第4四半期のプラスのパフォーマンスを下支えしました。リスク・センチメントが改善して投資家の需要が強まる中、クレジット・スプレッドが縮小し始めるにつれ、リターンはさらに向上する可能性があります。
マクロ経済環境が大きく変動し、FRBによる金融引き締めもあった中で、地方債が示したこの回復力をみると、2023年は楽観的な見通しを有することができるかもしれません。過去にも、課税地 方債はマイナス・リターンとなった年の翌年には 力強い回復をみせてきました。市場の下落によって高い利回りを獲得できるようになると、新たな投資資金を惹きつけることができるためです。 今後の経済動向とFRBの金融政策に関する不確実性は、2023年も米国債金利を不安定化させる可能性が高い一方、課税地方債は高利回り環境による恩恵を受けております。
2022年はFRBの金融政策に関心が集中し、一般的な地方債の特性に関する考慮が二の次になってしまいました。本来の特性は2023年に向かっては総じて好ましい状況にあるように思われます。高インフレ環境下で、格上げが格下げを上回る状況となった理由として、地方債の発行体が手掛ける事業が独占的でかつ、生活必需サービスを提供していることが挙げられます。そして課税地方債の供給の少なさは、強固なクレジット・ファンダメンタルズと相まって、潜在的なリセッションに対する備えが整っているようにみえます。当社はFRBによる利上げペースが鈍化すれば、今年は本来有する特性によって、地方債市場は回復すると期待しています。
地方債市場の2023年のテーマ
経済環境
- インフレを予測するのは依然として困難で、ピークに達した可能性は高いものの、2023年もFRBの物価上昇目標よりは大きく上振れたまま推移すると予想。
- 地政学的イベントがさらなる不確実性を誘引。
- 2022年、フェデラル・ファンド・レート(政策金利)は425bps上昇したが、2023年第1四半期はさらなる金利上昇を予想。
- 市場ではFRBの政策転換はすでに織り込み済み。
- 米国の経済成長は利上げと財政引き締めを背景に鈍化。
- 金利変動のピークは既に過ぎ去り、今後金利環境はより安定化すると予想。
地方債の市場環境
- 長期の課税地方債のバリュエーションは同様の格付けの社債に比べて魅力的。
- 歳入とレイニー・デー・ファンド(不慮の事態に備えた準備金)の積み立てが過去最高水準を記録し、堅固なクレジットを維持。
- 魅力的なスプレッドに加え、健全なクレジットが 経済の減速を前に魅力的なエントリー・ ポイントを提供。
- デフォルトは引き続き稀で、ハイリスク・セクターに限られた特異なケースにとどまる。
- 供給に関して、2022年は低調、2023年は新規発行が回復すると予想。米国金利と米ドルが安定すれば、需要は強まると期待。