2024年8月20日
投資見通し
ポートフォリオ
ポートフォリオ
構築テーマ
セクション2:ポートフォリオ構築テーマ
今日の投資環境をうまく乗り切ることはますます困難になっています。経済の亀裂拡大が、つまずいたり、長期的な展望から目がそれたりする原因となるからです。経済成長が鈍化する一方でインフレは依然として根強く残っており、金利はより長期的な高止まり状態にあります。しかし、これら障害物があっても、歩み続ける道はあります。当社は、慎重にリスクを取り、最適な分散を追求するとともに、経済・金融市場の状況変化に伴い浮上してくる新たな投資機会をみつけていきます。道のりは容易ではないかもしれませんが、当社は、投資家が変化し続ける環境を乗り切ってリターンを生み出し、リスクを管理できるように設計された複数のポートフォリオ構築テーマとアセット・クラスのアイデアを提供しています。
アセット・クラスの「ヒートマップ」
各アセット・クラスに対する当社の見方を示すクロスアセットの見解は、グローバルな金融市場において当社がどこに最も有望な相対的機会があると考えるかを示します。特定のポートフォリオについての見解を示すものではなく、「新たな資金を投入するにあたり、当社の確信度が最も高い見解は何か?」という質問に答えるものです。これらの見解は、1年間の投資期間で、長期的な成長を求める米ドル・ベースの投資家を想定しています。
主なポートフォリオテーマ
- より質の高い資産を増やし、経済サイクルの浮き沈みに対するエクスポージャーを縮小。
株式市場では、経済成長の減速に直面する中で、全体的な傾向としては比較的質が高く、それほどシクリカルでない銘柄への投資が適切であったと言えます。特に、米国の大型配当成長株は、厳しい経済環境の中でもそのレジリエンスを発揮する一方で、安定的なインカムゲインの成長性を提供しています。インフラ企業は比較的インフレ率が高い時期に業績が好調となることが多く、電化や製造サプライチェーンのニアショアリングなどの好ましいトレンドに支えられています。
米国以外では、当社は日本を中心に、今では優良銘柄を提供する先進国市場の見通しを「中立」に引き上げます。世界第2位の先進国市場である日本では、デフレを克服したことが今年の日銀の追加利上げで確認されたといえるでしょう。こうした質へのバイアスと同時に、新興市場では慎重ながらも選別的にリスクを取ります。中国では、第1四半期のGDP成長率が予想を上回り、国内の電気自動車生産台数は、米国で関税が課せられているにもかかわらず、欧州の需要急増に支えられて世界のEV販売台数の半分以上を占めています。
債券では、デュレーションをニュートラルに維持しつつ、信用リスクを追加します。デュレーションの短い投資家や余剰資金を保有している投資家は、質の高いバイアスを持つ特定のクレジット・セクターを追加することも考えられます。利下げを待っている投資家は、利回りの大幅な上昇を活用できない可能性もあります(図表1)。 - 利回りと分散投資を目指したオルタナティブ投資先として、あまり投資されていない道を歩む。
足元の投資環境は、シニア・ローンのような変動金利投資にとって魅力的です。シニア・ローンは、ボラティリティも下値リスクも低く、魅力的な相対利回りとともに、株式のようなリターンをもたらす可能性があります。また、シニア・ローンの最大のバイヤーであるローン担保証券(CLO)の組成が続いていることから、需給面でも良好です。CLOのファンダメンタルズも堅調に思われ、ローン価格は上昇しています。機関投資家の需要は引き続き旺盛で、個人投資家の関心も高まっています。さらに、魅力的な利回りを提供し、歴史的に金利リスクの影響を受けにくい優先証券も好感されており、発行体(主に銀行)は堅調で、増益が見込まれています。
GICは長い間、プライベート・クレジットを好んで投資 してきました。資金流入により過熱感があるのではないか、また、債務不履行件数が増加するのではないかと懸念する向きもあり、プライベート・クレジットに対するマイナス要因が顕在化する可能性もありますが、現在もその兆候は見られません。利回りは引き続き魅力的であり、カバレッジ比率は健全で流動性も十分あると考えます。
最後に、実物資産へも分散投資することで、投資家はより幅広いリスクへのエクスポージャーを取ることができます。金利が安定ないし低下する局面で好調なパブリック不動産は魅力的にみえる一方で、プライベート不動産はようやく底打ちし、改善の兆しが見えてきたと考えています。また、農地やアグリビジネスなどの分野でも大きなチャンスがあると見ています。 - クリーンエネルギーへの移行を活用。従来のエネルギー源からクリーンで再生可能な電力への移行はここ数年加速しています。同時に、AIによる電力需要増もあり、世界中で電力需要が増加しています。当社は、これらのトレンドを投資に活用できるさまざまな方法があると考えています。
エネルギー価格の上昇は、公益事業への投資にとって有利となるでしょう(特にコストをユーザーに転嫁可能な、規制が比較的少ないセクターや地域)。同時に、データセンターの不動産やインフラの需要が増加し、発電のニーズがさらに高まる可能性があります。太陽光や風力などの特定のクリーンエネルギー産業への直接投資は、バッテリー貯蔵システムとともに、継続的な成長に向けて順調です。さらに、農地投資は、特に油糧種子生産のような分野で、これらの変化から恩恵を受けると思われます。
もっと幅広い目でみると、再生可能エネルギーへの移行には多額の先行投資が必要なため、従来のエネルギー源がすぐに消えることはなく、天然ガスや原子力などの分野への投資も引き続き下支えされると思われます。
注目点:地方債は堅調
地方債には、多くのポジティブな要因があります。魅力的なインカム収益(特に税引き後のリターンを重視する投資家向け)を期待できるほか、信用面でのファンダメンタルズは健全で、需給要因も有利な状況となっています。
当社は年末に向けて短期金利がやや低下し、地方自治体のイールドカーブはスティープ化すると予想しており、地方債のデュレーションを長期化することが有利と思われます。また、金利環境の変化による追い風が見込めないとしても、地方債の利回りは歴史的に高水準であり、たとえ金利の低下やスプレッドの圧縮がなくても足元のインカム収益が魅力的なリターンを生み出すのに役立つと考えます。
また、課税地方債は、米国以外の投資家にとって魅力的と思われます。スプレッドは、世界の債券市場の他分野と比較して魅力的な水準にあり、ファンダメンタルズも引き続き非常に健全です。
確信度の高い見解
インフラ(+)は、経済成長の減速とインフレの高止まりという2つの逆風を乗り越えて恩恵を受ける可能性があります。パブリック・インフラとプライベート・インフラ双方とも魅力がありますが、当社は特にパブリック・インフラを選好します。
プライベート・クレジット(+)は、旺盛な投資家需要があり、引き続きファンダメンタルズも堅調です。当社は、景気後退局面に強いと思われるヘルスケア、ソフトウェア、保険会社など比較的底堅い分野を選好します。
地方債(+)にとっては、旺盛な需要と堅調なファンダメンタルズという追い風が続くと見られます。短期的に見て地方債は、国債に比べても、または地方債自体の過去実績に比べても割高感が低下しています。
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