2024年2月15日
投資見通し
2024年の
2024年の
経済と市場
経済と市場
知っておくべき重要なポイント
インフレは明らかにピークアウト
バックパッカーなら、下り坂では上り坂よりも怪我のリスクが高いことを知っています。これはトレードでも同じことが言えます。米国の総合消費者物価指数は2022年半ばに前年比9.1%と最高に達し、その後、6%近く減速して10月には3.2%となりました。欧州の物価指数はさらに急激に減速し、昨年の10.6%から直近値は2.4%となっています。総合物価指数がこうした頂点から滑り落ちるということは以前からわかっていたことです。問題は、より粘り強いコア物価指数が同じように低下するのか、それとも上り坂に戻って厄介な迂回路を取るのか、ということでした。
当社は、コア・インフレ率は米国で下降トレンドを維持しているとの確信を強めており、シェルター(住居費)のインフレ率も6カ月連続で減速していることから、今後もさらに減速を予想しています。賃金インフレ率は年率5%以上で上昇が続いていますが、先行指標を見ると、来年は4%に向けて減速が予想されます(図表2)。全体的にインフレ率はコロナ禍前のトレンドと比較して依然として高止まりしているものの、今後数カ月から数四半期にわたって減速が続くと予想されます。
残る景気後退リスク
インフレ見通しが改善した結果として、成長見通しも悪化しています。米国の失業率は、最近の低水準から0.5%上昇し、雇用創出ペースは年初の30万人超から今では20万人未満に減速しています。
消費と投資は引き続き堅調ですが、今日の旺盛な需要は、単に経済活動の前倒しに過ぎず、来年の成長が犠牲になるかもしれません。2023年の米国のGDP成長率コンセンサス予想は、年初以来2.0%引き上げられていますが、2024年の見通しは1.4%引き下げられています。来年の景気見通しはますます不安定になっているように見受けられ、完全なリセッションに陥るリスクが高まっています。また、ウクライナや中東、東アジアなど、新たな地政学的リスクが経済に重しとなる可能性もあります。このような状況の中で、2024年後半には緩やかな景気後退期に入る可能性は比較的高いと当社は考えています。
最終的には、来年後半に成長が鈍化し、労働市場が弱まり続ける中、米国で年半ばに利下げに向けた金融政策の転換が見られると当社は予想しています。
中央銀行による金融引き締めは終了
過去1年半、主要国の中央銀行はインフレ対策にもっぱら焦点を当ててきました。FRBと欧州中央銀行、英中銀は、ゼロ近傍だった政策金利を450~525ベーシスポイント上げて、数十年ぶりの高水準に引き上げました。今ではインフレ見通しが大きく改善したことで、全体的な利上げサイクルは終了すると当社は予想しています。一部の例外もあるでしょう。例えば、日本では利上げの確率が高く、オーストラリアおよび/またはスウェーデンがそれに続く可能性があります。
しかし、FRBやほとんどの他国中銀は、焦点をシフトさせると思われます。「どこまで」金利を上げる必要があるかではなく、現行水準を「どのくらいの期間」維持するか、という点が注目されるでしょう。インフレ率がFRBの目標値2%にしっかりと戻るまでにはまだ道のりは長く、今後数四半期は現行水準の金利が維持されると当社は考えています。
最終的には、来年後半に成長が鈍化し、労働市場が弱まり続ける中、年半ばに利下げに向けた金融政策の転換が見られると当社は予想しています。
金利と市場への影響は?
当社のマクロ見通しは、3つの重要な変数に基づいています。インフレはピークを過ぎ、経済成長もまもなくピークを迎え、中銀の政策金利は今ピークを迎えつつあります。歴史的に見て、こうした動きは全体的に金利のピークと、イールドカーブの再スティープ化とほぼ一致する傾向がありました。インフレ高進リスクが後退し、経済成長の下振れリスクが高まり、中銀が最終的な利下げのシグナルを発し始める中、今後数四半期にかけて、国債利回りは現在の水準から徐々に低下すると予想されます。
当社の基本シナリオとは相反する可能性のあるいくつかの変動要素があることは確かです。もし健全な成長が続くならば、FRBが来年は利下げを行う必要は全くなくなり、その結果国債価格が上昇しないという可能性もあります。巨額の財政赤字が続けば、債券価格の上昇圧力は抑えられるでしょう。米国外からの米債券需要は、引き続き高い為替ヘッジコストによって圧迫されています。当社はこれらのリスクを認識しているものの、債券をオーバーウェイトとするスタンスに徐々に確信を深めています。
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